宇宙飛行士になるためには、厳しい身体的および精神的な健康基準をクリアする必要があります。その中で意外にも重要視されているのが「歯の健康」です。

むし歯や歯周病があると、宇宙飛行士としての任務に支障をきたす可能性があり、選抜に影響を与えることもあります。

 では、なぜ宇宙飛行士にはむし歯がNGなのでしょうか？

その理由とともに、宇宙飛行士の選抜基準について詳しく見ていきましょう。

 

目次

①宇宙飛行士の選抜基準とは？

②宇宙飛行士選抜基準に歯の健康が含まれているのはなぜ？

③宇宙ならではの歯のトラブルとは？

④まとめ

 

①宇宙飛行士の選抜基準とは？

宇宙飛行士の選抜は非常に厳格で、身体的・精神的な健康状態が重要な要素となります。

選抜基準は、宇宙での長期間にわたるミッションを安全かつ効率的に遂行するために必要な条件を網羅しています。以下は主な基準です。

 

●健康状態（身体的条件）

宇宙飛行士は極限環境下でも任務を遂行しなければならないため、健康状態が最も重要です。

特に心臓、血圧、筋力、骨密度などが正常であることが求められます。

 また、視力や聴力も一定基準を満たす必要があります。視力に異常がある場合でも、補正できる場合に限り選抜対象となります。耳に関する障害があると選ばれないこともあります。

 さらに、宇宙での長期間のミッション中にむし歯や歯周病などが発生すると治療が困難になるため、歯の健康は非常に重要です。

選抜時には歯科検診が行われ、むし歯や歯周病がある場合は事前に治療を受ける必要があります。歯の問題があると選ばれないこともあります。

 

●精神的および感情的な安定性

宇宙飛行士は、孤独で閉鎖的な環境で過ごすことが多いため、精神的な安定が不可欠です。

ストレス耐性や人間関係での適応力も評価されます。

 長期のミッションでは強いストレスがかかるため、冷静に対応できる能力が必要です。

また、宇宙飛行士はチームで行動するため、協調性やコミュニケーション能力も重要です。

 

●知識と技能

宇宙飛行士には高い専門知識と技術が求められます。

航空工学、生物学、物理学などの知識はもちろん、宇宙船の操作、緊急時の対処法、宇宙環境の理解も必要です。

 通常、工学・科学・医学分野で学士号または修士号を取得していることが望まれます。

また、機械や設備の修理、実験実施などのスキルも必要とされます。

 

●身体能力と適応力

無重力環境で効率的に作業するための筋力や、長時間のミッションに耐える体力、そして過酷な環境に適応する能力が求められます。

 

●年齢制限と経験

宇宙飛行士に選ばれる年齢はおおむね30～50歳。健康状態や適性によって前後します。

また、航空機のパイロット、エンジニア、医師など、専門分野での職業経験が重視されます。

 

 

 

 

②宇宙飛行士選抜基準に歯の健康が含まれているのはなぜ？

宇宙飛行士の選抜基準に歯の健康が含まれるのは、宇宙の過酷な環境や長期ミッション中の医療制約によって、歯のトラブルが致命的な影響を及ぼす可能性があるためです。

 

●宇宙空間での医療環境の制限

宇宙ステーションでは医療設備や治療用リソースが極めて限られています。

無重力環境では通常の歯科治療が難しく、道具や薬剤の持ち込みにも制限があります。

そのため、むし歯や歯周病といった問題が発生しないよう、予防的な対策が重視されます。

 

●長期間のミッションでのトラブル防止

宇宙で歯のトラブルが起きると、食事・会話・集中力などに悪影響を及ぼします。

そのため、選抜時には小さなむし歯でも治療しておくことが求められます。

 

●健康管理の一環として

歯の健康は全身の健康と密接に関係しています。感染症予防や免疫維持のためにも、歯の健康は選抜項目に含まれます。

 

●通常より高いストレスにさらされる

宇宙では極度のストレス環境に置かれるため、地上では問題ない歯の状態でも痛みが出ることがあります。そのため、選抜では歯の状態をより厳しく確認します。

 

 

 

 

③宇宙ならではの歯のトラブルとは？

特に船外活動では、宇宙服内の気圧が約0.3気圧に下がるため、むし歯の空洞内に残った空気が膨張し、痛みを引き起こすことがあります。

 

●減圧環境での痛み

空洞内の空気が膨張し、詰め物や歯を内側から圧迫することで痛みが生じます。

減圧が進むほど痛みは強くなりますが、最終的には空気が抜けて和らぐこともあります。

 

●船内での痛みの再発

船外活動を終えて1気圧の船内に戻ると、再び気圧差によって痛みが発生することがあります。

これが繰り返されることで、任務中に集中力を欠くリスクが生じます。