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歯周病菌と腸内環境の意外な関係|
口腔内トラブルが全身疾患につながる理由

歯周病菌は腸内細菌叢の変動に関わっていることが、近年の研究で分かってきました。

健康な状態では、腸内は身体に有益な細菌叢によって保たれています。しかし歯周病になると、腸内細菌叢が変動し、代謝障害や腸管バリア機能の低下、免疫機能の低下など、さまざまな悪影響が引き起こされる可能性があります。

 

現在も研究は進行中であり、確固たるエビデンスや十分な症例数がそろっているとは言えません。そのため、歯周病菌が直接的に腸内の健康を損ねると断言することはできませんが、間接的に深く関与している可能性が高いことは確かです。

 

本記事では、現在有力とされている仮説をもとに、歯周病菌と腸内環境の関係について解説していきます。

目次

1. メタボリックドミノ

2. 口腔内トラブルが全身に悪影響を及ぼすメカニズム

3. 今後の展望

4. まとめ

 

1.メタボリックドミノ

「メタボリックドミノ」という言葉をご存じでしょうか。

 

生活習慣の乱れは、メタボリックシンドロームを引き起こします。まず、高血圧・高血糖・脂質異常症といった状態が生じ、さらに進行すると、脳卒中や認知症などの全身疾患がドミノ倒しのように連鎖して発症していきます。この負の連鎖を「メタボリックドミノ」と呼びます。

 

実は、このドミノの最上流に位置すると考えられているのが、むし歯や歯周病などの口腔内トラブルです。

 

歯周病になると、歯周ポケットの炎症部位から歯周病菌やその毒素、炎症性サイトカインが血流に乗って全身へ運ばれます。これにより、脂肪組織の代謝障害が悪化したり、全身の炎症が助長されたりすることが分かっています。

 

このように、口腔内トラブルはお口の中だけの問題ではなく、全身の健康状態にも影響を及ぼします。一見、口腔内と腸内は無関係に思えるかもしれませんが、口腔内細菌と腸内細菌は密接に関係しており、歯周病と肥満の間にも相関関係があることが報告されています。

 

ここからは、口腔内トラブルがどのように腸へ悪影響を及ぼすのか、そのメカニズムを見ていきましょう。

 

2.口腔内トラブルが全身に悪影響を及ぼすメカニズム

歯周病が糖尿病や関節リウマチに悪影響を及ぼすことは、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

近年の研究では、歯周病がメタボリックシンドローム、慢性腎疾患、誤嚥性肺炎、炎症性腸疾患、冠動脈性心疾患などのリスクファクターである可能性も示されています。

 

では、なぜ口腔内の病原体が全身に影響を及ぼすのでしょうか。

 

 

■歯周病菌が歯周ポケットから全身に流れ出す

歯周病が進行すると歯周ポケットが深くなり、炎症が慢性化します。その結果、歯周病菌や炎症性サイトカインが歯周ポケットの炎症部位から血管内へ侵入し、血流に乗って全身へ運ばれます。

 

これが、さまざまな臓器や組織で炎症を引き起こす一因になると考えられています。

 

 

■歯周病菌が腸内細菌叢を変動させる

腸内細菌叢は、健康な状態では炎症を抑制し、腸内の代謝機能を維持する役割を果たしています。

 

しかし、「ディスバイオーシス」と呼ばれる腸内細菌叢のバランスが崩れた状態になると、腸管の炎症や、肥満・糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まることが分かっています。

 

歯周病菌の一種である Porphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス) は、腸内細菌叢の乱れを誘導することが報告されており、ディスバイオーシスを介して全身の病態を悪化させる可能性が示唆されています。

 

 

■口腔内細菌が腸内に定着し炎症を引き起こす

実験研究により、炎症性腸疾患の患者の腸内から、口腔内由来の細菌が多く検出されることが分かっています。

 

このことから、口腔内細菌が腸内に定着し、腸管で炎症反応を引き起こしている可能性が考えられています。

 

 

■歯周病菌を飲み込むことが様々な病気のリスクファクターとなる

重度の歯周病患者の唾液中には、歯周病菌である Porphyromonas gingivalis が多量に含まれています。人は1日に約11.5リットルの唾液を無意識のうちに飲み込んでいるため、歯周病が進行していると、それだけ多くの歯周病菌を体内に取り込んでいることになります。

 

さらに、この菌は耐酸性が高く、生きたまま消化管へ到達することが分かっています。その結果、腸内細菌叢が変動し、以下のような悪影響が報告されています。

 

・脂肪組織に肥満と類似した変化が生じる

・肝臓に非アルコール性脂肪性肝疾患様の変化が現れる

2型糖尿病の前段階である耐糖能異常が起こる

・腸管バリア機能の低下、炎症性サイトカイン遺伝子の発現上昇、血中内毒素レベルの上昇がみられる

 

3.今後の展望

歯周病菌が全身に及ぼす影響についての研究は、近年急速に進められていますが、まだ研究数は限られており、歯周病菌が直接的に病変を引き起こすと示すエビデンスは十分とは言えません。

 

歯周病菌は血流によって全身へ運ばれるものの、一過性であり、臓器や組織に定着して直接的な悪影響を及ぼす可能性は低いという仮説も存在します。

 

しかし、間接的に歯周病菌が全身へ影響を及ぼすことは明らかになりつつあり、歯周病菌によるディスバイオーシスは、歯周病と全身疾患を結びつける合理的な仮説と考えられています。

 

今後、歯周病菌によって変動する腸内細菌叢の特定や、免疫系との相互作用、疾患との関連がさらに解明されることが期待されています。

 

4.まとめ

歯周病と全身疾患が関係していると聞くと、意外に感じるかもしれません。しかし歯周病は慢性的な炎症状態であり、炎症が続く限り、炎症性サイトカインは体内に放出され続けます。

 これらの炎症性サイトカインが全身へ波及することで、さまざまな疾患の引き金になる可能性があります。そのため、歯周病は早期発見・早期治療が非常に重要です。

「お口の中の病気」と軽く考えず、日々のセルフケアと定期的な歯科受診を心掛けましょう。

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