奥歯が抜けたまま放置すると起こるデメリットを解説します。奥歯が1本抜けただけでドミノのように他の歯まで悪くなってしまうことがあります。奥歯を失ったときの治療法も紹介するので、参考にしてください。

 

目次

①奥歯が抜けたまま放っておくとどんなことが起きるか

②奥歯がなくなったときの治療法（インプラント・入れ歯・ブリッジ）

③まとめ

 

①奥歯が抜けたまま放っておくとどんなことが起きるか

奥歯は口の中で大切な役割を担っています。奥歯がないと噛みにくくなり、食事がしづらくなることがあります。さらに、残存歯が多いほど長生きしやすいという研究もあり、歯の健康は生活の質に直結します。

何らかの理由で奥歯が抜けてしまった場合、放置すると様々なトラブルが生じます。見た目の問題はもちろん、歯並びや咬み合わせの崩れ、発音のしづらさなど機能的な問題、さらには全身への影響にまで及ぶことがあります。本記事では、奥歯を放置したときに起こり得る問題と、その対処法について詳しく解説します。

 

●対合歯（咬み合っていた歯）の挺出

本来、上下の歯は噛み合っていますが、どちらかの歯がなくなると咬合力がかからなくなり、反対側の歯が伸びてくることがあります。これを「挺出（ていしゅつ）」と呼びます。変化はゆっくり進むため気づきにくいですが、治療時に障害になったり、見た目や咬み合わせに悪影響を及ぼします。

 

●歯並びが悪くなる

歯が抜けるとその分のスペースが生じ、周囲の歯が動いて隙間に傾いてきます。特に奥歯は大きいため、移動による影響が大きく、全体の歯並びが乱れやすくなります。

 

●他の歯まで次々に悪くなる

奥歯は咬合支持（噛むときの支え）を担っています。奥歯を失うと、咬合支持が失われ、噛む力が他の歯に分散され余計な負担がかかります。その負担に耐えられなくなると、隣接する歯や対合歯も悪化し、最終的に連鎖的に歯を失うことがあります。これが「ドミノ現象」と呼ばれる状態です。悪循環を止めるためにも、欠損部位は早めに補う必要があります。

 

●咬み合わせが悪くなる

歯が挺出したり斜めに傾いたりすることで、正しい咬み合わせが崩れます。奥歯は食べ物をすりつぶして消化を助ける重要な役割もありますが、咬み合わせの不良は食事の仕方や消化にも悪影響を及ぼします。

 

●歯ぐきの骨が痩せてくる（歯槽骨の吸収）

歯を失ったまま放置すると、その部分の歯槽骨（歯を支える骨）が吸収され、歯ぐきが痩せてきます。骨量が減ると、見た目が悪くなるだけでなく、後で補綴治療（インプラントなど）を行う際の条件が悪くなることがあります。

 

●発音しにくくなる

発音は舌や歯の形・位置によって助けられています。歯がなくなって隙間が生じると、空気が漏れてサ行やタ行などの発音に影響が出ることがあります。

 

●見た目が悪くなる

単純に歯がないことで見た目が気になるだけでなく、対合歯の挺出や隣の歯の傾きが生じるため、全体の審美性が低下します。

 

●肩こりや頭痛などが出ることも

奥歯を失うと、無意識のうちに片側でばかり噛むようになり、左右の噛み方のバランスが崩れます。その結果、顎周辺の筋肉や首・肩の筋肉に負担がかかり、肩こりや頭痛の原因になることがあります。咬合のバランスは全身の筋骨格に影響を与え得るため、軽視しないことが重要です。

 

 

 ②奥歯がなくなったときの治療法

奥歯の欠損を補う代表的な治療法は、インプラント、入れ歯、ブリッジの3つです。欠損の場所や本数、骨の状態、患者さんの希望や費用等をふまえて選択します。

 

■インプラント

骨の状態が良ければ、欠損部位に人工歯根（インプラント）を埋めて被せ物を装着します。見た目が自然で噛む力もほぼ回復するため、機能面・審美面で優れた選択肢です。ただし手術が必要で、骨量が不足している場合は骨造成などの処置が必要になることがあります。

■入れ歯

欠損部位を入れ歯で補う方法です。保険適用のものもあり、比較的短期間で対応できますが、インプラントに比べると噛む力が弱く、異物感や審美性で劣る場合があります。部分入れ歯の場合、周囲の歯にバネをかけることが一般的です。

■ブリッジ

両隣に健康な歯がある場合、両隣の歯を土台にして橋渡しするように人工歯を被せる方法です。違和感が少なく保険適用のものもありますが、両隣の健康な歯を削る必要があり、その歯の寿命に影響を与える可能性がある点がデメリットです。